吸入薬指導加算は、吸入薬を使用している患者に対して薬剤師が吸入指導を行い、その結果を保険医療機関に情報提供した場合に算定できる加算です。
2026年度(令和8年度)改定で、この加算に関して2つの変更がありました。
ひとつは算定頻度の変更です。これまで3ヶ月に1回だったものが、6ヶ月に1回に改定されました。単純に算定できる回数が半分になる改悪です。
もうひとつは対象患者の追加です。喘息・COPDが対象でしたが、インフルエンザウイルス感染症に対して吸入薬を用いる患者も正式に対象に加わりました。
対象が広がった一方で頻度が半減した——薬局にとっては差し引きでマイナスになりうる改定です。
基本の点数と算定頻度
点数:30点(6ヶ月に1回)
ただし、同じ患者に別の吸入薬が新たに処方された場合は、前回の算定から6ヶ月以内であっても改めて算定できます。たとえば喘息でフルチカゾンを使っている患者にインフルエンザでイナビルが処方された場合などが該当します。
なお、在宅患者訪問薬剤管理指導料(区分4のロ・ハ)を算定している患者には算定できません。
算定の前提条件——「求め」と「同意」が必要
算定するには以下のいずれかの場合である必要があります。
- 保険医療機関からの求めがあった場合
- 患者または家族等の求めがあった場合等、吸入指導の必要性が認められ、かつ医師の了解を得たとき
患者から「吸入の仕方を教えてほしい」と言われた場合は後者に該当します。ただし医師の了解が必要なため、処方元との連携がスムーズに取れていると算定しやすくなります。
患者または家族等の同意を得ることも必要です。
対象疾患ごとに指導内容が違う
留意事項では、対象疾患によって求められる指導内容が明確に区別されています。
喘息・COPD(慢性疾患)
文書および練習用吸入器等を用いて吸入手技の指導を行い、患者が正しい手順で吸入薬を使用できているか確認することが求められます。継続的に使用している薬剤なので、手技の定着度を確認しながら指導するイメージです。
インフルエンザ(急性疾患)——2026年度改定で追加
インフルエンザ治療薬(リレンザ・イナビルなど)を用いる患者が対象に加わりました。
短期間で終わる急性期治療であるため、手技の「定着」より「その場で確実に吸入できているかの確認」が目的になります。慢性疾患の継続的な支援とは性質が異なります。指導方法の詳細な要件は、告示・通知で確認することをおすすめします。
保険医療機関への情報提供が必須
算定要件のもうひとつの柱が、保険医療機関への文書による情報提供です。
具体的には、吸入指導の内容・患者の吸入手技の理解度等を処方医に伝えることが求められます。
現場から見て
吸入薬指導加算は2020年(令和2年)に新設されましたが、この加算が「ゼロから始まった話」かというと、そうではありません。
病院では以前から、呼吸器疾患の治療チームに臨床薬剤師が加わり、吸入指導を担う文化がありました。また全国各地の薬剤師会が、医療機関と薬局をつなぐ吸入指導連携を自主的に立ち上げており、点数がなくても「吸入できているかどうかが治療成績に直結する」という認識が現場にはあったのです。つまりこの加算は、すでに実績のある取り組みを国が正式に評価したものといえます。
その本来の趣旨は、繰り返し指導することで手技を定着させ、治療効果を上げることでした。吸入ステロイドはデバイスごとに吸入速度・呼吸法が異なり、1回教えれば終わりではない。患者が正しく使えているかを継続的に確認することに、この指導の意味がありました。
ところが今回の改定では、性質がまったく異なるインフルエンザ治療薬の指導が同じ加算に組み込まれました。リレンザ・イナビルは短期間で終わる急性期治療であり、「手技の定着」ではなく「その1回を確実に吸入させること」が目的です。慢性疾患の継続的な支援とは、前提が根本的に違います。
この2つを同じ枠に入れながら算定頻度を6ヶ月に引き下げた——財源の都合で「インフルエンザ分を足して、慢性疾患分を削った」という構図に見えてしまいます。算定回数が減れば、薬局が吸入指導に割く時間と手間も自然と減っていく。喘息患者への指導がおざなりになっていく可能性すら感じます。
診療報酬の交渉において、薬剤師の職能の本質をどう伝えるか——今回の改定結果を見ると、そこに課題があると感じざるを得ません。
まとめ
- 吸入薬指導加算:30点(6ヶ月に1回)
- 2026年度改定でインフルエンザウイルス感染症に対する吸入薬も対象に追加
- 喘息・COPD:文書・練習用吸入器を用いた手技指導+確認
- インフルエンザ:急性期治療薬の吸入確認(詳細要件は告示・通知で確認)
- 保険医療機関への文書による情報提供が必須
- 服薬情報等提供料との重複算定は不可
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この記事の制度に関する記述は2026年6月時点の情報に基づいています。診療報酬の詳細は改定のたびに変わるため、最新情報は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。


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