かかりつけ薬剤師制度の変更——2026年改定で何が変わったのか

診療報酬・制度の解説

薬局に転職してはじめて、「かかりつけ薬剤師ってどういう制度なんだろう」とちゃんと調べました。

病院では、入院患者さんは基本的に短期間で退院しますし、外来はほとんど院外処方です。抗がん剤の外来化学療法など一部の例外はありますが、多くの場面では一人の薬剤師が特定の患者さんを継続して担当する、という形にはなりにくい環境です。薬局に来てはじめて、一人の薬剤師が患者さんの薬を継続的かつ一元的に担当する制度があること、そしてそれが診療報酬として評価されていることを知りました。

2026年度の診療報酬改定で、この制度にもいくつかの変更がありました。この記事では、かかりつけ薬剤師制度の概要と変更点、そして病院から転職した立場から見たリアルを書いています。


かかりつけ薬剤師とは

かかりつけ薬剤師とは、患者さんが「この薬剤師に薬のことを相談したい」と同意し、一人の薬剤師が継続的に服薬管理・指導を担う仕組みです。

複数の医療機関からの処方をまとめて把握し、重複投薬や相互作用を確認する。在宅医療で患者さんの自宅を訪問する。夜間・休日の相談に対応する——こうした役割を一人の薬剤師が責任を持って担います。

2026年改定以前は「かかりつけ薬剤師指導料(76点)」「かかりつけ薬剤師包括管理料(291点)」として算定されていましたが、2026年改定でこれらは廃止され、**服薬管理指導料のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合)**に統合されました。


2026年改定で何が変わったか

2026年度改定では、算定体系の大幅な見直しと薬剤師側の要件緩和が行われました。

【算定体系の変更】 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料が廃止され、服薬管理指導料に統合されました。あわせて新たな加算が導入されています。

  • フォローアップ加算(50点):薬剤交付後に電話等で患者さんの状態を確認した場合、3か月に1回算定可。ただし在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定している患者は対象外
  • 訪問加算(230点):残薬整理や服薬情報提供を目的とした訪問を行った場合、6か月に1回算定可

なお、上記点数は令和8年3月5日保医発0305第8号に基づいており、詳細は正式告示・通知をご確認ください。

【薬剤師側の要件緩和】

要件改定前改定後
同一薬局への在籍期間1年以上6か月以上
週あたりの勤務時間32時間以上31時間以上

なお、産休・育休からの復職の場合は在籍期間を合算できます。

在籍期間が1年から6か月に短縮されたことで、転職後より早い段階でかかりつけ薬剤師として算定できる可能性が生まれました。

一方で、薬局勤務経験に関する要件は変わっていません。かかりつけ薬剤師として算定するには、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験が必要です。(特掲診療料施設基準通知 保医発0305第8号 令和8年3月5日 第97の2条)


病院経験は「1年分」算入できる

転職者にとって気になるのが「病院での経験は薬局勤務経験として認められるのか」という点です。

結論から言うと、病院(保険医療機関)での薬剤師勤務経験は、最大1年を上限として薬局勤務経験に算入できます。

つまり、病院で10年以上勤めていても、薬局勤務経験としてカウントされるのは1年分まで。残りの2年分は、転職後に薬局で実際に働いて積み上げる必要があります。

これを踏まえると、病院から薬局に転職した場合のかかりつけ薬剤師までの目安は次のとおりです。

  • 薬局に転職してから約2年(病院経験1年分+薬局経験2年分)で要件を満たせる計算になります
  • ただし、在籍期間の要件(6か月)も別途満たす必要があります

転職直後からかかりつけ薬剤師にはなれませんが、2年程度のスパンで見れば現実的に到達できる要件です。


かかりつけ薬剤師になるために必要なこと

薬局勤務経験の年数以外にも、いくつかの要件があります。

  • 研修認定薬剤師等の資格:日本薬剤師研修センターや学術団体が認定する研修認定薬剤師などの取得が求められます
  • 同一薬局への6か月以上の在籍(2026年改定後)
  • 週31時間以上の勤務(2026年改定後)
  • 患者さんの同意:制度の仕組み上、患者さん自身が「この薬剤師をかかりつけにしたい」と同意する必要があります
  • 薬局全体の要件:常勤薬剤師の平均在籍年数が1年以上、または管理薬剤師が3年以上の勤務経験を持つことも施設基準として求められています

研修認定薬剤師の取得は、転職前から計画的に進めておくことができます。病院勤務中から研修単位を積んでおくと、転職後の準備がスムーズになります。


同意取得・お薬手帳記載・コピー保管の実務

かかりつけ薬剤師として算定するためには、患者さんから同意を得ることが必須です。留意事項に定められた手順は次のとおりです。

同意取得の方法は、患者さんのお薬手帳の所定の欄(薬局名・保険薬剤師の連絡先等が記載される欄)の近傍に**「かかりつけ」の文字と薬剤師の氏名を記入し、患者さん又はその家族等から同意を得る**という形が基本です。なお、同意取得は当該薬局に複数回来局している患者さんに対して行うこととされており、同意を得た当日の処方箋受付から算定できます。

お薬手帳への記載については、同意取得の際に記入が必要な欄が定められています。留意事項では「1の(5)のイの(イ)の①から④までの事項及び薬剤師の氏名の近傍に『かかりつけ』の文字を記入する」と規定されており、①〜④の内容は次のとおりです。

  • 患者の氏名・生年月日・連絡先等
  • アレルギー歴・副作用歴等(薬物療法の基礎となる記録)
  • 患者の主な既往歴・疾患
  • 患者が日常的に利用する保険薬局の名称・保険薬局または保険薬剤師の連絡先等

かかりつけ薬剤師の氏名と「かかりつけ」の文字は、この④の欄の近傍に記入します。これがかかりつけ薬剤師に特有の記載事項です。

コピーの保管については、記載されたページのコピー等を薬局側が保管することが求められています。また、薬剤服用歴にもかかりつけ薬剤師として担当している旨を記載しておく必要があります。

これらの手続きは、算定要件の年数を満たしているだけでは不十分で、日々の実務として正確に運用できているかが問われます。転職してかかりつけ薬剤師を目指す場合は、要件の年数と同時に、こうした実務の流れを現場でしっかり学んでおくことが大切です。


今回の改定、正直どう見るか

個人的な見解として書いておきます。

今回の改定を現場目線で見ると、実質的な減算だと感じています。

改定前は、かかりつけ同意を取れば毎回76点が算定できました。改定後は、服薬管理指導料のベース点数はかかりつけも非かかりつけも同じです。上乗せになるフォローアップ加算(50点)や訪問加算(230点)は、それぞれ3か月・6か月に1回しか算定できない。介入がなかった回はかかりつけのメリットがほぼ消える計算です。

国の説明としては「制度の実質化」という言葉が使われます。同意を取るだけで毎回76点という運用が形骸化していた面があったため、「実際に何か介入した時だけ評価する」設計に変えた——という論理です。これ自体は一定の合理性があります。

ただ、「本気でかかりつけ薬剤師制度を育てようとしているか」という点では、正直懐疑的です。フォローアップ加算の算定条件は厳しく、現場で使いやすい設計とは言えません。在宅・訪問への関与を求める方向性は見えますが、それを支える薬剤師の体制への手当ては薄い。

「制度の方向性は示しているが、財政的裏付けが伴っていない」——そういう印象を受けています。やる気がないというより、財政抑制とのバランスの中で、結果的にかかりつけ制度の報酬的なメリットが薄れてきている、というのが現状ではないでしょうか。

個人的には、このまま改定を重ねるうちにかかりつけ薬剤師に関連する加算は徐々になくなっていくのではないかとさえ感じています。制度として残るとしても、算定できる場面がどんどん限定されていき、現場にとっての実感が伴わないものになっていく——そういう流れに見えます。

そう考えると、病院から薬局に転職する側にとっては、「かかりつけ薬剤師の要件をすぐに満たせないこと」が足枷になりにくくなるかもしれません。加算としての価値が薄れていくなら、要件を満たすまでの期間のハンデも相対的に小さくなる。もちろん、今後の改定でどう転ぶかはわかりませんが、現時点での見立てとしてはそう感じています。


まとめ

  • かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は2026年改定で廃止され、服薬管理指導料(かかりつけ薬剤師が行った場合)に統合。フォローアップ加算・訪問加算が新設された
  • 2026年改定で在籍期間(1年→6か月)・勤務時間(週32→31時間)の要件が緩和された
  • 薬局勤務経験3年以上が引き続き必要——病院経験は最大1年分算入可
  • 病院から転職した場合、約2年で要件を満たせる計算になる
  • 研修認定薬剤師の取得は転職前から準備しておくとスムーズ

かかりつけ薬剤師制度は、薬剤師が患者さんに継続的に関われる仕組みとして、今後の薬局業務の中心になっていく制度だと感じています。転職後のキャリアの一つの目標として意識しておく価値があると思います。


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この記事の制度に関する記述は2026年6月時点の情報に基づいています。診療報酬の詳細は改定のたびに変わるため、最新情報は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

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