はじめに
「ケフラールの細粒、在庫ありますか?」
最近、この確認を何度もするようになりました。ケフラール(セファクロル)は、成人用のカプセルは入荷があるのに、小児用の細粒だけ入ってこない、という状態が続いていて、正直かなり困っています。
しかも、これはケフラールだけの問題ではありませんでした。同じ第一世代セフェム系のケフレックス(セファレキシン)側も調べてみると、実は厳しい状況が続いています。業界全体で第一世代セフェム系の小児用製剤が品薄になっている、というのが実感です。
処方箋を受け取るたびに「このままでは調剤できない」という場面に直面するので、実際に調べて対応した内容を、現場の記録として残しておきます。
セファクロル(ケフラール)系の供給状況
自局で確認した限りでは、セファクロル関連製品の状況は次のようになっていました(2026年9月22日時点の確認内容です)。
| 製品 | 剤形 | 供給状況 |
|---|---|---|
| ケフラールカプセル250mg(先発・共和薬品工業) | カプセル | 通常出荷 |
| セファクロルカプセル250mg「トーワ」 | カプセル | 通常出荷(増加) |
| セファクロルカプセル250mg「JG」「SN」「SW」「TCK」 | カプセル | 供給停止 |
| ケフラール細粒小児用100mg(先発) | 細粒 | 供給停止(解消見込み:2027年3月) |
| L-ケフラール顆粒375mg | 顆粒 | 限定出荷(他社経由) |
| セファクロル細粒10%「日医工」「JG」「SW」 | 細粒 | 供給停止 |
| セファクロル細粒20%「日医工」 | 細粒 | 限定出荷(他社経由) |
先発・後発を問わず、小児用の細粒はほとんどの製品が供給停止という状況です。ケフラール細粒小児用100mgに至っては、解消見込みが2027年3月と、まだ先の話になりそうです。カプセルは先発と一部後発(トーワ)が通常出荷なので、カプセルを砕いて調整するなどの対応を検討している薬局もあるかもしれませんが、小児への実施は服薬指導・剤形適性の観点から慎重な判断が必要です。
セファレキシン(ケフレックス)系も実は厳しい
セファクロルだけの問題かと思っていましたが、同じ第一世代セフェム系のセファレキシンも調べてみると芳しくありませんでした。
| 製品 | 剤形 | 供給状況 |
|---|---|---|
| ケフレックスカプセル250mg(先発・共和薬品工業) | カプセル | 限定出荷(自社・減少) |
| L-ケフレックス顆粒500mg/小児用顆粒200mg | 顆粒 | 限定出荷(他社経由・減少) |
| ケフレックスシロップ用細粒100 | 細粒 | 供給停止 |
| ケフレックスシロップ用細粒200 | 細粒 | 限定出荷(他社経由・減少) |
| セファレキシンカプセル250mg「トーワ」 | カプセル | 供給停止 |
| セファレキシンドライシロップ小児用50%「日医工」 | ドライシロップ | 供給停止 |
| セファレキシン顆粒500mg「JG」 | 顆粒 | 供給停止 |
| セファレキシン錠250mg「日医工」 | 錠 | 通常出荷(増加) |
こちらも小児用の剤形(シロップ用細粒・ドライシロップ・顆粒)が軒並み厳しい状況でした。
意外な発見:ラリキシン(富士フイルム富山化学)は通常出荷
調べていて見つけたのが、同じセファレキシンの製品であるラリキシン(富士フイルム富山化学)です。
| 製品 | 剤形 | 供給状況 |
|---|---|---|
| ラリキシンドライシロップ小児用10%/20% | ドライシロップ | 通常出荷(増加) |
| ラリキシン錠250mg | 錠 | 通常出荷(増加) |
錠剤だけでなく、小児用のドライシロップまで通常出荷・増加傾向というのは正直意外でした。同じ有効成分(セファレキシン)でも、ブランドによってここまで供給状況が違うとは思っていなかったので、これは知っておく価値のある情報だと思います。
ただし、注意点もあります。データ上は「通常出荷」でも、実際に近隣の卸に確認してみると流通量自体が少なく、すぐに手に入る状況ではありませんでした。「通常出荷」という表示だけを鵜呑みにせず、切り替えを検討する際は事前に卸へ在庫状況を確認しておくことをおすすめします。
現時点での代替薬の考え方(私見)
あくまで一薬局としての、現時点での整理です。
セファクロル(ケフラール)が処方されているケース
- 第一選択:ワイドシリン細粒(アモキシシリン)を取り寄せて対応。小児科領域ではこれでほぼ対応できている
- 耐性菌が懸念される例外的なケースのみ:クラバモックス(アモキシシリン/クラブラン酸)を医師に相談
- 第三世代セフェム(メイアクト・フロモックスなど)への安易な切り替えは避ける(後述)
セファレキシン(ケフレックス)が処方されているケース
- 同一成分のブランド違いであるラリキシンへの切り替えを、まず処方医に確認・相談する
- それも難しい場合は、上記と同様にペニシリン系での代替を検討する
第三世代セフェム系はどうか?医師が敬遠する理由
「それならメイアクトやフロモックスでいいのでは」と思われるかもしれませんが、これらは医師側から敬遠されることが多いというのが実感です。
理由は、メイアクト(セフジトレンピボキシル)やフロモックス(セフカペンピボキシル)に含まれる「ピボキシル基」にあります。ピボキシル基は消化管吸収を促進するための構造ですが、代謝の過程でピバリン酸が生じ、これがカルニチンと結合して尿中に排泄されます。その結果、小児(特に乳幼児)では低カルニチン血症に伴う低血糖・痙攣を起こすことがあると、PMDAから注意喚起が出ています¹。
短期間の投与でも発現した報告があるため、供給不足を理由に安易に切り替えるのは避けたい、という判断は妥当だと思います。
バナンはどうなのか?調べてわかったこと
「バナンならどうか」という話も出てきたので、これは実際に調べてみました。
結論としては、バナン(セフポドキシムプロキセチル)は、PMDAが注意喚起の対象としているピボキシル基含有抗菌薬のリストには含まれていません¹。
PMDAが公式に挙げているピボキシル基含有抗菌薬は、以下の一般名を持つ薬に限られます¹。
- セフカペン ピボキシル(フロモックスなど)
- セフジトレン ピボキシル(メイアクトMSなど)
- セフテラム ピボキシル(トミロンなど)
- テビペネム ピボキシル(オラペネムなど)
- ピブメシリナム塩酸塩(メリシンなど)
バナンの一般名「セフポドキシムプロキセチル」は、名前が似ていますが、化学構造上は別の構造(プロキセチルエステル)で、ピバリン酸を生じる代謝経路とは異なります。実際、バナンの添付文書にも低カルニチン血症・低血糖に関する記載は見当たりませんでした。
「ピボキシル」と「プロキセチル」、名前が似ているので現場でも混同しがちですが、この機会に整理できたのは収穫でした。ただし、第三世代セフェムに共通するバイオアベイラビリティの低さ(添付文書上の用量では十分な血中濃度が得られにくいという指摘)は残るため、安易な代替と考えず、あくまで選択肢の一つとして医師と相談するのが適切だと思います。
まとめ
ケフラール細粒小児用の出荷停止をきっかけに調べてみると、セファクロルだけでなくセファレキシン系も含めて、第一世代セフェム系の小児用製剤全体が厳しい状況にあることが分かりました。
現時点での対応をまとめると、セファクロル処方にはワイドシリン細粒を軸にした代替、セファレキシン処方には同成分のラリキシンへの切り替え相談、第三世代セフェムへの切り替えはピボキシル基のリスクを踏まえて慎重に、という整理になります。
供給不足は今後も別の薬で起こり得ることです。「代替薬をどう考えるか」という視点そのものを普段から持っておくことが大切だと感じています。
参考文献
- ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について. PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.8(2012年4月). https://www.pmda.go.jp/files/000143929.pdf
※本記事の情報は参考情報かつ一薬局の対応記録です。供給状況は日々変動します。実際の処方判断・代替薬の選定は、必ず医師と相談のうえ、最新の供給状況・電子添文をご確認ください。

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