ヒルナミン錠25mgが手に入らない……レボトミン販売中止の影響と代替の考え方【薬局に問い合わせが来た話】

はじめに

「ヒルナミンの25mg、そちらにありませんか?」

先日、地域の薬局からこんな電話がかかってきました。
うちの店舗ではレボメプロマジン(ヒルナミン・レボトミンの成分名)を使っている患者さんがおらず、在庫もありません。「すみません、うちも扱いがなくて……」と答えるしかありませんでした。

電話を切ったあと、気になって調べてみると、同じ成分の薬がまとめて手に入りにくくなっていることがわかりました。
そして、「いつかうちにも処方が来たら、どうしよう」と考えさせられました。

この記事では、

  • なぜ今、ヒルナミンが手に入りにくいのか
  • 規格ごとの今の供給状況
  • 処方が来たときの代替の考え方

を、厚労省の供給状況データ(2026年9月25日公表分)をもとにまとめました。


なぜ今、ヒルナミンが足りないのか

ヒルナミン(共和薬品工業)とレボトミン(田辺ファーマ)は、どちらもレボメプロマジンという同じ成分の薬です。
承認されている効能・効果は、統合失調症、躁病、うつ病における不安・緊張です。精神科の領域のほか、緩和ケアの領域で使われることもあります。

今回の品薄は、次のような流れで起きています。

  1. レボトミンの供給が止まった
    レボトミンは数年前から供給が不安定な状態が続いていました。そして2026年5月、田辺ファーマから全規格(錠・散・顆粒)の製造販売中止が発表されました
  2. 患者さんがヒルナミンに集中した
    レボトミンを使っていた患者さんの処方が、同じ成分のヒルナミンに切り替わっていきました
  3. ヒルナミンも限定出荷に
    需要が急に増えた結果、2026年8月5日から、ヒルナミン錠(5mg・25mg・50mg)が限定出荷になりました

つまり、1社の薬がなくなった影響が、もう1社の薬に一気に押し寄せた形です。
薬局どうしで「そちらにありませんか?」と在庫を探し合う電話が増えているのは、この流れの結果なんですね。


規格ごとの今の供給状況

厚労省の供給状況データ(2026年9月25日公表分)では、次のようになっていました。

ヒルナミン(共和薬品工業)

規格出荷の状況出荷量
ヒルナミン錠(5mg)限定出荷増加
ヒルナミン錠(25mg)限定出荷増加
ヒルナミン錠(50mg)限定出荷増加
ヒルナミン散50%限定出荷(他社品の影響)通常
ヒルナミン細粒10%通常出荷増加

レボトミン(田辺ファーマ)

規格出荷の状況
レボトミン錠5mg通常出荷(ただし薬価削除の予定)
レボトミン錠25mg・50mg供給停止(在庫消尽済み)
レボトミン散10%・50%、顆粒10%供給停止(在庫消尽済み)

後発品

規格出荷の状況出荷量
レボメプロマジン錠25mg「ツルハラ」(鶴原製薬)通常出荷増加

ヒルナミン錠は「限定出荷」ですが、メーカーは出荷量を増やしている状態です。
まったく手に入らないわけではなく、これまで使っていた薬局には届くけれど、新しく注文するのは難しい、というのが「限定出荷」の実態です。
新規の患者さんや、初めて扱う薬局ほど困りやすい状況だといえます。

💡 レボトミンについては、報道では経過措置期間(保険で使える期限)が2028年3月末ごろとされていますが、記事作成時点(2026年9月)では、正式な削除告示はまだ確認できていません。実際にはすでに多くの規格が在庫消尽済みで、手に入りません。期限が気になる場合は、厚労省の薬価基準に関する告示や、社会保険診療報酬支払基金の経過措置医薬品情報で最新の状況をご確認ください。


処方が来たときの代替の考え方

では、ヒルナミン錠やレボトミンの処方が来たら、どう動けばいいのでしょうか。
いつ処方が来ても慌てないよう、対応の流れを整理してみました。

① まずは卸に在庫を確認する

限定出荷でも、卸によっては在庫がある場合があります。
「新規の患者さんで、継続して使う予定」など、事情を具体的に伝えると、対応してもらえることもあります。

② 25mgなら、後発品「ツルハラ」を検討する

レボメプロマジン錠25mg「ツルハラ」は、通常出荷で、出荷量も増えています。
同じ成分・同じ規格なので、一般名処方の場合や、銘柄名処方でも「変更不可」になっていなければ、変更調剤のルールの範囲で対応できる可能性があります。
変更したときは、処方医への情報提供も忘れずに行いましょう。

ただし「ツルハラ」は25mgだけです。5mgや50mgの処方には、そのままでは使えません。

③ 細粒10%への切り替えを処方医に相談する

ヒルナミン細粒10%は通常出荷です。
錠剤が手に入らない場合、細粒への剤形変更を処方医に相談するのもひとつの方法です。

⚠ 散・細粒は濃度の違いに注意
ヒルナミン散は50%、ヒルナミン細粒は10%です(レボトミン散には10%と50%の両方がありました)。
同じ「粉薬」でも、濃度が5倍違います。成分量(mg)で処方されているか、製剤量(g)で処方されているかを必ず確認して、秤量の間違いが起きないように気をつけましょう。

④ 手に入らないときは、処方医と相談する

どうしても手に入らない場合は、処方医に疑義照会して、ほかの薬への変更も含めて相談することになります。
レボメプロマジンは、使われる目的(精神症状、緩和ケアなど)によって代わりになる薬が変わるので、薬局だけで決めずに、必ず処方医と相談しましょう。

⑤ ほかの薬局を紹介する

自分の薬局でどうしても用意できないときは、用意できる薬局を探して紹介することも大切です。
今回の問い合わせの電話も、きっと向こうの薬局が患者さんのために動いていた結果なんですよね。

💡 2026年7月に厚労省から出た「薬剤師の調剤応需義務等について」の通知では、在庫がないことだけを理由に調剤を断ることは認められないと明記されました。
在庫がないときこそ、取り寄せ・代替の相談・他の薬局の紹介など、患者さんが薬を受け取れるように動くことが求められています。
通知の詳しい解説はこちら → 薬局のカスハラ、断っていいの?「調剤応需義務」の新通知を現場の薬剤師が読んでみた


問い合わせを受けて感じたこと

今回、「うちも扱いがなくて」と答えることしかできませんでした。
でも、あとから思うと、

  • 「ツルハラの後発品なら、通常出荷ですよ」
  • 「細粒10%は普通に出ているみたいです」

といった情報だけでも伝えられたら、相手の薬局の助けになったかもしれません。

供給不足が当たり前になった今、薬局どうしで情報を交換し合うことも、地域の医療を支える大事な仕事なんだと感じました。
次に同じような電話が来たら、「在庫はないけど、こういう選択肢があるみたいです」と、ひとこと添えられる薬剤師でいたいと思います🌿


まとめ

  • レボトミンの製造販売中止で、同じ成分のヒルナミン錠(5・25・50mg)が2026年8月から限定出荷に
  • ヒルナミン細粒10%と、後発品のレボメプロマジン錠25mg「ツルハラ」は通常出荷(2026年9月25日時点)
  • 処方が来たら、①卸に確認 → ②25mgならツルハラを検討 → ③細粒への変更を処方医に相談 → ④手に入らなければ処方医と代替を相談 → ⑤ほかの薬局を紹介
  • 散(50%)と細粒(10%)の濃度の違いに注意
  • 在庫がないことだけを理由に断ることはできない。情報を伝えるだけでも、地域の助けになる

供給状況は日々変わります。実際に対応するときは、最新の情報を必ず確認してください。
少しでも参考になれば嬉しいです😊


参考

  • 厚生労働省「医療用医薬品の供給状況」(2026年9月25日公表分)
  • 田辺ファーマ レボトミン製造販売中止のお知らせ(2026年5月)
  • 共和薬品工業 ヒルナミン錠の供給に関するお知らせ

※他の供給状況の記事

この記事を書いた人
yakuzaishi-real

病院薬剤師として10年以上勤務したのち、30代で薬局薬剤師へ転職しました。抗がん剤の調製やチーム医療、病棟での服薬指導など、病院での経験を土台に、転職体験や薬局の日常を本音でお伝えしています。同じように悩む薬剤師の方の参考になれば嬉しいです😊

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