はじめに
「モビコールが、LDは小児限定、HDは12月から出荷停止……?」
慢性便秘症の薬として使われているモビコール配合内用剤について、EAファーマが2026年9月に供給制限の案内を出しました。
- LD:2027年6月頃まで限定出荷。ただし小児の患者さん限定での使用がお願いされています
- HD:2026年11月まで限定出荷、12月から2027年6月ごろまで一時出荷停止
後発品がない薬なので、同じ成分の別の銘柄に変えて対応する、ということはできません。
慢性便秘症の処方が来たときに慌てないよう、
- 何が起きていて、いつまで続く見込みなのか
- 成人の処方で、処方医と相談するときに確認したいこと
- 代わりに検討されうる薬の、10月時点の供給状況
を、メーカーの案内と厚労省のデータをもとに整理しました。
モビコールってどんな薬?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | マクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウム(配合) |
| 分類 | 浸透圧性下剤 |
| 規格 | LD(1包6.8523g)、HD(1包13.7046g) |
| 製造販売 | EAファーマ |
| 後発品 | なし |
| 効能・効果 | 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く) |
| 対象 | 2歳以上の小児から成人(2歳未満は臨床試験を実施していない) |
| 飲み方 | 水に溶かして服用(LD1包あたり約60mL)。溶かしたあとは速やかに服用する |
HDの1包は、LDの1包のちょうど2倍の量です。LDとHDで1包の中身の量が違うので、処方箋の「包数」だけを見て同じ量だと考えないよう注意したいところです。
禁忌
- 本剤の成分に対する過敏症の既往歴がある
- 腸閉塞、腸管穿孔、重症の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、中毒性巨大結腸症など)が確認されている、またはその疑いがある
投与中は腹痛や下痢があらわれることがあり、症状に応じて減量・休薬・中止を考える、とされています。
何が起きているのか
EAファーマの案内(2026年9月)によると、経緯は次のとおりです。
- 海外の製造所で、現地の規制当局による査察を受け、品質システムについて指摘があった
- 現在、その是正対応と当局との確認が行われていて、製造・出荷を一時停止している
- 従前どおりの安定供給が難しいと判断し、限定出荷・供給停止とすることにした
| 製品 | 出荷対応 |
|---|---|
| モビコール配合内用剤LD | 2027年6月頃まで限定出荷(小児の患者さん限定) |
| モビコール配合内用剤HD | 2026年11月まで限定出荷 → 2026年12月から2027年6月ごろまで一時出荷停止 |
出荷再開は2027年6月頃を見込んでいますが、今後の状況で変わる可能性があるとされています。
なお、これまでに出荷された製品は、品質試験の結果などを総合的に評価した結果、有効性・安全性に影響を及ぼす問題は確認されていないと案内されています。
厚労省の供給状況データ(2026年10月23日公表分)でも、LD・HDとも「②限定出荷(自社の事情)」で、解除の見込みは「2027年6月頃」です。出荷量の区分は、LDが「出荷量減少」、HDが「出荷量通常」でした(9月29日更新)。理由の区分は「行政処分(製造委託を含む)」となっていますが、メーカーの案内では、背景は海外製造所の査察での指摘とされています。
ここで押さえておきたいのは、次の3点です。
- 小児のLDは継続。ただし、メーカーも「供給量に限りがある場合がある」と案内している
- 成人は、LDは「小児限定」の依頼、HDは12月から出荷停止。メーカーは成人の代替品としてグーフィス錠5mgを案内している
- 再開の見込みは2027年6月頃で、半年以上続く可能性がある
日本消化器病学会も、EAファーマからの連絡を受けて周知依頼を出していて、小児への継続的な供給確保に配慮することと、成人では代替薬への切り替えを検討することを求めています。小児では、服薬のしかたや治療を続けやすさの面から、ほかの薬への切り替えが簡単ではないことも指摘されています。
学会のお知らせの本文には、具体的な代替薬の名前や、成人への新規処方の制限までは書かれていませんでした。
薬局でまず確認したいこと
処方箋が来たら、まず次のことを確認します。
患者さんについて
- 小児か、成人か(LDは小児限定での使用がお願いされています)
- LDとHDのどちらか、1日の包数、いつから使っているか
- 手元の残りは何日分か、次の受診日はいつか
薬局の側
- 自分の薬局の在庫と、卸から入手できる見込み
- 同じ薬を使っている患者さんが何人いて、LD・HDのどちらか(12月以降に困りそうな人を先に洗い出す)
⚠ 多めに確保しようとする動きが広がると、本当に必要な小児の患者さんに届きにくくなります。必要な分だけの発注にとどめましょう。
成人の処方で、処方医と相談するときの考え方
在庫の見通しが立たない成人の処方では、処方医に早めに相談することになります。
そのとき、「在庫がありません」だけで終わらせず、判断材料をそろえて伝えられると、相談がスムーズです。
「モビコール → グーフィス」は、単純な置き換えではありません
メーカーが成人の代替品として案内しているのは、グーフィス錠5mgです。
ただ、2つの薬はしくみも使い方も違います。
| モビコール | グーフィス | |
|---|---|---|
| 分類 | 浸透圧性下剤 | 胆汁酸トランスポーター阻害薬 |
| 剤形 | 水に溶かして飲む散剤 | 錠剤 |
| 成人の用法 | 包数を調整(処方医が決める) | 1日1回、食前に10mg。最高1日15mg |
| 禁忌(主なもの) | 過敏症、腸閉塞・腸管穿孔・重症の炎症性腸疾患(確認されている、または疑い) | 過敏症、腫瘍・ヘルニアなどによる腸閉塞(確認されている、または疑い) |
どちらも「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」が効能ですが、薬の選び方、量、切り替えのタイミングは、患者さんの状態を見て処方医が決めることです。薬局が代わりの薬を決めるわけではありません。
処方医に伝えると相談しやすい情報
- 今のモビコールの用量(LD・HD、1日の包数)と、使っている期間、効き具合
- 現在の排便の状況(回数、かたさ、お腹の張りや痛み)
- これまでに使った便秘薬と、その効果・副作用
- ほかに飲んでいる薬(便秘の原因になる薬、すでに併用している下剤)
- 腸閉塞や炎症性腸疾患の既往・疑い(どちらの薬でも禁忌に関わります)
- 腎機能(マグネシウム製剤を検討する場合は、高マグネシウム血症のリスクの確認が欠かせません)
- 食事の時間や、薬の飲み方で困っていること(グーフィスは食前の服用、モビコールは水に溶かして飲む、という違いがあります)
検討されうる薬の、10月時点の供給状況
メーカーが案内しているグーフィス以外にも、慢性便秘症では様々な薬が使われます。
次の表は、供給状況の一覧であって、置き換え先の推奨ではありません。適応、対象年齢、禁忌は薬ごとに異なるので、実際の選択は処方医の判断です。
| 薬 | 分類 | 出荷の状況(厚労省データ10月23日公表分) |
|---|---|---|
| グーフィス錠5mg(EAファーマ) | 胆汁酸トランスポーター阻害薬 | 通常出荷 |
| アミティーザカプセル12μg・24μg(ヴィアトリス) | 上皮機能変容薬 | 通常出荷 |
| リンゼス錠0.25mg(アステラス) | 上皮機能変容薬 | 通常出荷 |
| 酸化マグネシウム(各社) | 浸透圧性下剤(塩類下剤) | 37品目中35品目が通常出荷(供給停止の2品目は、薬価削除予定のマーレッジ配合DS・ミルマグ内用懸濁液) |
| モニラック・シロップ65%(丸石製薬) | 浸透圧性下剤(ラクツロース) | 限定出荷(需要増・他社品の影響) |
| ラグノスNF経口ゼリー(三和化学研究所) | 浸透圧性下剤(ラクツロース) | 限定出荷(出荷量減少、見込み未定) |
| ラクツロースシロップ「コーワ」「タカタ」「NIG」 | 浸透圧性下剤(ラクツロース) | 通常出荷 |
| ピコスルファートNa(各社) | 刺激性下剤 | 15品目中13品目が通常出荷。「サワイ」錠2.5mgは限定出荷、ラキソベロン錠は薬価削除予定 |
| センノシド(各社) | 刺激性下剤 | 12品目すべて通常出荷 |
モビコールの供給制限をきっかけに、ラクツロース系のモニラックとラグノスNFにも限定出荷が広がっているのがわかります。「とりあえずラクツロースに」という選び方が、銘柄によっては成り立ちにくくなっています。
小児の処方では
小児のLDは、メーカーが供給継続を優先するとしていて、引き続き使えます。
ただし、「供給量に限りがある場合がある」とも案内されているので、次の点を意識したいところです。
- 保護者の方に、次回分の残りと受診日を早めに確認する
- 在庫が不安なときは、早めに処方医に相談する(入手できる日に合わせた日数にするなど)
- 成人の患者さんが切り替えを検討することが、小児の分を確保することにつながるという背景を、説明するときに意識する
在庫がなくて調剤できないとき
2026年7月の厚労省通知「薬剤師の調剤応需義務等について」では、在庫がないことだけを理由に調剤を断ることは認められないとされました。
卸への確認、処方医への疑義照会、ほかの薬局の紹介など、患者さんが薬を受け取れるように動くことが求められています。
通知の詳しい解説はこちら → 薬局のカスハラ、断っていいの?「調剤応需義務」の新通知を現場の薬剤師が読んでみた
ほかの薬局を紹介するときは、LDかHDか、規格と包数、小児の分も含めて、紹介先に事前に電話で在庫を確認しておくと、患者さんが無駄足にならずにすみます。
患者さん・保護者への説明で気をつけたいこと
成人の患者さん
- 「供給の事情で、薬が変わるかもしれません」と早めに伝える。小児の患者さんに薬を届けるための依頼でもある、と添えると伝わりやすい
- 薬が変わる前に、自己判断で量を減らして節約したり、やめたりしないよう伝える
- 切り替えたあとは、便の回数やかたさ、お腹の張りや痛みを気にかけてもらい、気になる変化があれば処方医や薬局に連絡する
- 飲み方が変わる場合(水に溶かす散剤→食前に飲む錠剤など)は、新しい処方の指示どおりに、タイミングを具体的に説明する
- 強い腹痛、吐き気、お腹の張りが続くときは、早めに受診するよう伝える
小児の保護者の方
- モビコールLDは引き続き使えることを、まず伝えて安心してもらう
- ただし供給量に限りがある場合があるので、残りが少なくなったら早めに連絡してもらう
- 自己判断で量を減らしたり、やめたりしない
「供給の都合で、いろいろご不便をおかけします。でも、先生と相談しながら対応しますので、残りが少なくなったら早めに教えてくださいね」
こんなふうにひとこと添えるだけで、患者さんやご家族の不安はずいぶん違うと思います🌿
調べてみて感じたこと
「HDが止まる」というニュースだけを見ると、単に1つの薬がなくなる話に見えます。
でも、データを並べてみると、
- LDは小児優先、HDは12月から停止
- 成人の代替として案内されているのは、別のしくみの薬
- ラクツロース系の一部にも、すでに限定出荷が連鎖している
と、薬局での対応は「同じ薬の別の銘柄を探す」のとはまったく違う、処方医との相談が中心の仕事になることがわかりました。
再開は2027年6月頃と、長い見通しです。
12月の出荷停止が始まる前に、患者さんごとの状況を整理して、処方医に判断材料をそろえて相談できるようにしておきたいですね。
まとめ
- モビコール配合内用剤は、LDが2027年6月頃まで限定出荷(小児限定)、HDが2026年12月から2027年6月ごろまで一時出荷停止(11月までは限定出荷)。後発品はない
- 原因は、海外製造所の査察での品質システムの指摘。出荷済みの製品には、有効性・安全性への影響は確認されていない
- 成人の代替品としてメーカーが案内しているのはグーフィス錠5mgだが、しくみも用法も違うので単純な置き換えではない。切り替えるかどうか、どの薬にするかは処方医の判断
- 代わりの候補の供給状況にはばらつきがあり、ラクツロース系のモニラック・ラグノスNFは限定出荷。グーフィス・アミティーザ・リンゼス・酸化マグネシウムは通常出荷(10月23日公表分)
- 薬局では、小児か成人か、LD・HDのどちらか、残りの日数と次の受診日を整理して、早めに処方医に相談する。必要な分だけの発注にとどめる
- 小児のLDは継続。ただし供給量に限りがある場合があるので、残りが少なくなる前の連絡をお願いする
供給状況は日々変わります。実際に対応するときは、最新の情報と電子添文を必ず確認してください。
少しでも参考になれば嬉しいです😊
参考
- EAファーマ「モビコール配合内用剤LD/HDの供給に関するお知らせ」(2026年9月)
- 日本消化器病学会「モビコール配合内用剤LD/HDの供給に関するお知らせ(周知依頼)」(2026年10月)
- 厚生労働省「医療用医薬品の供給状況」(2026年10月23日公表分)
- モビコール配合内用剤 電子添文
- グーフィス錠5mg 電子添文
- 厚生労働省 医薬発0708第1号「薬剤師の調剤応需義務等について」(2026年7月8日)
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