第三種向精神薬まとめ、薬局での管理方法は?(内服剤編)

はじめに

第一種・第二種向精神薬について整理してきましたが、実は薬局で圧倒的に見かける機会が多いのは第三種向精神薬です。デパス(エチゾラム)、マイスリー(ゾルピデム)、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)……名前を並べてみると、「これも向精神薬だったのか」と改めて実感します。

第一種・第二種は「記録義務があるかどうか」で第三種と線引きされることが多いのですが、実際に調べてみると、記録義務以外の部分は第一種・第二種とほとんど同じルールが適用されていました。「第三種=管理がゆるい薬」というイメージを持っていましたが、それは正確ではなさそうです。

なお、この記事は薬局での取扱いが中心のため、注射剤は対象から省略しています。


第三種向精神薬の代表例(内服剤)

東京都の手引き(令和8年3月改訂)に掲載されている第三種向精神薬のうち、薬局で調剤する機会が多いものを中心にまとめると、以下の通りです¹。

一般的名称主な販売名用途の例
エチゾラムデパス抗不安薬・睡眠導入剤
ゾルピデム酒石酸塩マイスリー睡眠導入剤
トリアゾラムハルシオン睡眠導入剤
ブロチゾラムレンドルミン睡眠導入剤
ニトラゼパムネルボン、ベンザリン睡眠導入剤
ロルメタゼパムエバミール、ロラメット睡眠導入剤
クアゼパムドラール睡眠導入剤
ゾピクロンアモバン睡眠導入剤
アルプラゾラムコンスタン、ソラナックス抗不安薬
ロラゼパムワイパックス抗不安薬
クロチアゼパムリーゼ抗不安薬
クロルジアゼポキシドコントール、バランス抗不安薬
ジアゼパムセルシン、ホリゾン(坐剤:ダイアップ)抗不安薬・抗けいれん剤
クロナゼパムランドセン、リボトリール抗てんかん薬
クロバザムマイスタン抗てんかん薬
ロフラゼプ酸エチルメイラックス抗不安薬(長時間型)
フェノバルビタールフェノバール抗てんかん薬・鎮静剤
マジンドールサノレックス食欲抑制薬
ペモリンベタナミン精神刺激薬

睡眠導入剤・抗不安薬の定番どころがほとんどここに含まれていて、日々の処方箋で最も目にする向精神薬は、実は第一種・第二種ではなく第三種だと改めて分かりました。

なお、ジアゼパムには内服(セルシン、ホリゾン)のほか坐剤(ダイアップ)もあります。フェノバルビタールにも内服(フェノバール)とは別に注射剤があります。この記事は内服剤中心の整理のため、坐剤・注射剤の管理上の細かい違いまでは扱っていません。また、似た名前のエスゾピクロン(ルネスタ)はゾピクロンとは別成分で、向精神薬には指定されていません。名前が紛らわしいので、混同しないよう注意が必要です。


記録義務:法定の義務はないが、推奨はされている

第三種向精神薬の最大の特徴は、譲受け・譲渡し・廃棄したときの法定の帳簿記録義務がないことです¹²³。前回・前々回の記事で扱った第一種(コンサータなど)・第二種(サイレースなど)には、譲受け・譲渡し・廃棄のたびに品名・数量・年月日・相手方の名称及び所在地を記録し、2年間保存する義務がありましたが、第三種にはこの義務そのものがありません。

ただし、「記録しなくてよい」という意味ではなく、在庫管理の観点から、譲受けについて記録し、定期的に在庫確認を行うことが望ましいとされています¹²³。法律上の義務ではありませんが、実務上は第一種・第二種と同じように記録している薬局も多いはずです。


保管:実は第一種・第二種と同じルールが適用される

ここが、調べていて一番意外だったポイントです。

麻薬及び向精神薬取締法上の保管ルールは、「第一種向精神薬」「第二種向精神薬」のように種別を区切って規定されているのではなく、「向精神薬」という括りでまとめて規定されています¹²³。つまり、第三種であっても次のルールがそのまま適用されます。

  • 薬局内の人目につかない場所で保管すること
  • 盗難防止の注意が十分払われている場合を除き、鍵をかけた設備内で保管すること
  • 麻薬と区別して保管すること
  • 毒薬・劇薬と区別して保管すること
  • 毒物・劇物と区別して保管すること

「第三種は記録義務がないくらいだから、保管も多少緩いのでは」と思っていたのですが、少なくとも法令上は、第一種・第二種・第三種のどれであっても保管に関する義務は同じでした。デパスやマイスリーだからといって、一般の医薬品と同じ棚に置いてよいわけではありません。


廃棄:許可・届出は不要、記録義務もなし

向精神薬の廃棄そのものに、許可や事前の届出は必要ありません。焼却、酸・アルカリによる分解、希釈、他の薬剤との混合など、回収が困難な方法で行う必要がある点は、第一種・第二種と同じです¹²³。

第一種・第二種は廃棄したときに記録義務がありましたが、第三種にはこの法定の記録義務がありません。廃棄方法そのもののルールは共通、記録の要否だけが違う、という整理になります。

ただし、これも法定義務がないだけで、記録を残さなくてよいという意味ではありません。在庫差異の説明や、盗難・紛失との区別をつけるためにも、廃棄した品名・数量・年月日程度は自局の記録として残しておいた方が安心です。具体的な廃棄方法(焼却・分解・希釈など)は、製剤の性状や自局の廃棄手順、所管自治体の指示に従ってください。


事故:第三種でも都道府県知事への届出は必要

ここも見落としやすいポイントでした。「記録義務がないなら、盗難や紛失があっても特に届出は要らないのでは」と思いがちですが、事故の届出義務は「向精神薬」全般に課されているルールで、第三種であっても対象外にはなりません¹²³。

一定数量以上の向精神薬について、滅失・盗取・所在不明などの事故が生じた場合は、速やかに都道府県知事へ「向精神薬事故届」を提出しなければなりません。届出の対象となる数量基準は、剤形によって次のように定められています。

剤形届出基準となる数量
末・散剤・顆粒剤100グラム(包)
錠剤・カプセル剤・坐剤120個
内用液剤10容器
経皮吸収型製剤(貼付剤)10枚

この記事では内服剤を中心に扱っているため注射剤は表から省略していますが、公的な基準には注射剤(10アンプル/バイアル)も定められています。

この数量に満たない場合でも、盗難・強奪・脅取・詐取であることが明らかな場合は、数量にかかわらず都道府県知事への届出に加えて警察署への届出も必要です¹²³。

「記録義務がない=何かあっても届出不要」ではない、という点は、第三種を扱ううえで特に意識しておきたいところです。


偽造・変造処方箋に特に注意したい種別

東京都の手引きには、偽造・変造された向精神薬処方箋への対応が詳しく解説されています¹。実務上、デパスやマイスリー、ハルシオンといった第三種向精神薬は処方頻度が高く睡眠導入剤・抗不安薬として広く使われているだけに、偽造・変造処方箋のターゲットになりやすい薬でもあります。

処方箋の外観(インクの色合い、印影の不自然さ、用紙端の不自然な切断跡など)、交付医療機関(なじみのない医療機関、架空の医療機関の可能性)、患者情報(初めての患者、在庫確認の電話をかけてから来局するなど)、処方欄記載内容(有効期限切れ、規格や日数の改ざんの形跡など)に不審な点がないか確認し、疑わしい場合は処方医に問い合わせてから調剤する、という基本は、第三種であっても徹底する必要があります¹。疑わしいと感じても、その場で患者さんに「偽造ではないか」と断定的に告げたり処方箋を取り上げたりはせず、薬局の手順に沿って処方医療機関への疑義照会や、所管の保健所・警察への相談につなげることが基本です¹。

偽造・変造処方箋により向精神薬を交付してしまった(騙し取られた)ことが判明した場合も、向精神薬事故届による届出が必要です。これは前述の「詐取」にあたるため、交付した数量にかかわらず届出の対象になります¹。


薬局で働いて気づいたこと

第一種・第二種の記事を書いたときは「記録義務があるかどうか」を種別の境界線として意識していましたが、第三種を調べてみると、その境界線は帳簿記録義務の有無だけで、保管・廃棄方法・事故時の届出義務といった他のルールはほぼ共通していることが分かりました。

デパスやマイスリーのように処方頻度の高い薬ほど、「見慣れているから」という理由で管理が甘くなりがちかもしれませんが、法律上の位置づけとしては、帳簿記録義務こそ軽減されているものの、保管や事故対応は第一種・第二種と共通のルールが求められています。ただし、コンサータやノルスパンテープのような製品ごとの流通管理・登録制度は第三種にはないので、「記録義務以外は完全に同一」というよりは、「保管や事故対応の基本ルールは共通」という理解にとどめておくのが正確だと思います。日常的に扱う薬だからこそ、こうした基本ルールを一度整理しておく価値があると感じました。


まとめ

第三種向精神薬(内服剤)の管理方法をまとめると、以下の通りです。

  • デパス(エチゾラム)、マイスリー(ゾルピデム)、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)など、日常的に処方される睡眠導入剤・抗不安薬の多くが第三種向精神薬に該当する
  • 法定の帳簿記録義務はないが、これは「記録しなくてよい」という意味ではなく、譲受け・廃棄の記録や定期的な在庫確認を行うことが実務上推奨されている
  • 保管ルール(人目につかない場所での施錠保管、麻薬・毒薬劇薬・毒物劇物との区別)は第一種・第二種と同じ
  • 廃棄に許可・届出・記録義務は不要だが、回収困難な方法で行う点は共通
  • 事故(滅失・盗取・所在不明)の都道府県知事への届出義務は、第三種でも第一種・第二種と同じように課される
  • 処方頻度が高いぶん、偽造・変造処方箋のターゲットになりやすく、処方箋確認は特に重要

「第三種=管理が緩い」というイメージは正確ではありません。帳簿記録義務は第一種・第二種より軽減されていますが、保管・事故対応・偽造処方箋への注意は第三種でも変わらず必要です。日常的によく扱う薬だからこそ、こうした違いを正しく理解しておきたいと感じました。


参考文献

  1. 向精神薬取扱いの手引(薬局用). 東京都保健医療局(令和8年3月改訂). https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/r8-3_kouseisinnyakutoriatukaitebikiyakkyoku-pdf
  2. 薬局における向精神薬取扱いの手引. 厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課(平成23年9月). https://saiyaku.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/02/20110909a.pdf
  3. 向精神薬のしおり(薬局・卸売販売業用). 千葉県健康福祉部薬務課(平成24年3月改訂版). https://www.pref.chiba.lg.jp/yakumu/yakubutsu/mayaku/toriatsukai/documents/24kouseisin2.pdf

※関連記事

※本記事の情報は参考情報です。実際の管理・記録・届出の運用については、必ず最新の法令・所管の都道府県窓口の指示をご確認ください。

この記事を書いた人
yakuzaishi-real

病院薬剤師として10年以上勤務したのち、30代で薬局薬剤師へ転職しました。抗がん剤の調製やチーム医療、病棟での服薬指導など、病院での経験を土台に、転職体験や薬局の日常を本音でお伝えしています。同じように悩む薬剤師の方の参考になれば嬉しいです😊

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