はじめに
令和8年度の調剤報酬改定から数ヶ月が経ちました。実は今年、管理薬剤師を任されることになり、今の店舗に異動してきたばかりです。前年はまだこの店舗にいなかったので、「改定前と比べて忙しくなった」というような感覚的な比較ができるわけではありません。
それならと、実際のところどうなのか気になって、自分でデータを引っ張り、改定前後(前年同期の6〜8月)を比較してみることにしました。処方箋枚数・保険請求額・粗利まで一通り数字で確認してみると、体感では気づいていなかった変化が、いくつもはっきり見えてきました。
伸び率や制度の変化点を中心に、現場目線で分かったことを整理します。
処方箋枚数は伸びているのに、単純には喜べない
まず処方箋枚数ですが、前年同期比で+5.8%と、着実に伸びていました。ここだけ見ると「順調に患者さんが増えている」という話になりそうです。
ただ、保険請求額(技術料+薬剤料)は前年同期比で+19.7%と、枚数の伸びを大きく上回っていました。「枚数が増えたから請求額も増えた」という単純な話ではなく、1枚あたりの単価そのものが上がっていることが分かります。
内訳を見ると、薬剤料単価が+14.6%上昇しており、合計単価の伸びのほぼ全てを薬剤料が牽引していました。令和8年度の薬価改定は医療費ベースで▲0.86%程度のマイナス改定(引き下げ)なので、本来は単価を押し下げる方向に働くはずです。それでも単価が上がっているのは、高薬価品(新薬・専門薬など)への処方構成の変化が影響している可能性がありますが、今回の集計だけでは要因を特定できないため、あくまで推測の域を出ません。
技術料が伸び悩んでいる——これは算定漏れではなく制度改定の影響
正直、ここが一番「なるほど」と思った部分です。処方箋枚数が増えているにもかかわらず、技術料単価は▲2.1%とわずかに下がっていました。
原因を探ってみると、令和8年度改定(令和8年4月1日施行)で、調剤管理料の1(内服薬・1剤につき)の日数区分が4段階から2段階に簡素化されていました。
| 区分 | 令和6年度(改定前) | 令和8年度(改定後) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 7日分以下 | 4点 | 10点 (27日分以下) | +150% |
| 8〜14日分 | 28点 | ▲64% | |
| 15〜27日分 | 50点 | ▲80% | |
| 28日分 | 60点 (28日分以上) | +20% | |
| 29日分以上 | 60点 | 変化なし |
※27日分以下はすべて10点に統一されました。28日分以上は60点に統一されていますが、改定前は「29日分以上」が60点の境界だったため、28日分については50点→60点と実質的に引き上げられています(区分の境界が1日前倒しになったイメージです)。
つまり、これまで28点または50点だった8〜27日分が、一律10点まで引き下げられています。一方で区分の境界も「29日分以上」から「28日分以上」へ1日前倒しされており、28日分は改定前の50点から改定後60点へ、逆に引き上げられています。うちの薬局でもこの日数帯の処方は一定量を占めていたので、技術料単価の伸び悩みはほぼこの制度変更が主因と考えてよさそうです。算定を取りこぼしているわけではなく、制度側の構造変化だと分かったのは、地味に安心した部分でもあります。
とはいえ、処方日数は処方医が決めるものであり、薬局側でコントロールできるものではありません。技術料が制度側の要因で目減りしている以上、その分は日数区分以外の部分で取り返していく必要があります。
今回の改定では、調剤管理料の短期処方区分が抑制される一方、在宅訪問薬剤管理指導料(650点/320点/290点)まわりの評価も見直されています。外来中心から在宅対応へ評価の重点を移す政策的な方向性は感じ取れます。ただし、調剤管理料を抑えた分がそのまま在宅の財源に充てられている、と明示した資料があるわけではありません。ここはあくまで数字を眺めていて感じた、私個人の仮説として読んでいただければと思います。
粗利で見ると、売上ほどは伸びていない
保険請求額が+19.7%と聞くと「かなり増収では」と思いがちですが、粗利(薬価差益を厳しめに仮定して試算)で見ると、伸び率は+9.0%程度にとどまっていました。売上の伸びの半分以下です。
理由はシンプルで、薬剤料の伸びの多くは仕入原価の増加分と相殺されているためです。薬剤料そのものは大きく伸びていても、その分仕入れも増えているので、手元に残る利益はそこまで増えない、という構図でした。なお、ここでいう粗利は薬価差益率を一定と仮定して試算した参考値であり、返品・値引き・人件費等まで含めた会計上の粗利・営業利益そのものではない点にご注意ください。
差益率の仮定を変えても傾向は大きく変わらず、技術料(仕入原価がかからない部分)の下支えが、粗利全体に占める比重として意外と大きいことも分かりました。技術料が伸び悩んでいる今、余計にその重みを感じます。
まとめ
今回、前年同期比で実際のデータを比較してみて分かったことを整理すると、次のようになります。
- 処方箋枚数は伸びているが、保険請求額の伸びはそれ以上で、主因は薬剤料単価の上昇
- 技術料単価は微減。調剤管理料の1(内服薬)の日数区分簡素化という制度改定の影響で、算定漏れではない
- 粗利の伸びは売上の伸びの半分以下。薬剤料の増収分は仕入原価の増加とかなり相殺されている
今回は前年の自分自身の体感と比較できたわけではありませんでしたが、だからこそ「数字で確認してみて初めて分かった」ことばかりでした。感覚だけに頼らず、こうして定期的にデータで振り返る機会は大事だなと感じています。
※本記事の数値は、一薬局における前年同期(6〜8月)比較の結果を、伸び率ベースで紹介したものです(具体的な金額は割愛しています)。制度に関する記述は2026年9月時点の情報に基づいています。最新の算定要件は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

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