管理薬剤師は副業できる?薬機法の「兼務禁止」と、2026年7月の厚労省通知を現場の薬剤師が整理してみた

はじめに

「管理薬剤師って、副業してもいいの?」
「休みの日に、ほかの薬局で少しだけ働くのはダメ?」

管理薬剤師になると、こんな疑問を持つ人は多いと思います。
一般の薬剤師なら、職場の就業規則が許せば、ダブルワークをしている人も珍しくありません。でも、管理薬剤師には法律上の「兼務の禁止」があります。

しかも2026年7月30日には、管理薬剤師がほかの場所で働いていた違反事案をきっかけに、厚労省から「薬局における適正な業務の確保等について」という通知も出ました。

この記事では、

  • 管理薬剤師の「兼務禁止」とは何か
  • 例外として認められるのはどんなときか
  • 薬剤師の仕事以外の副業はどうなのか
  • 7月の通知で、あらためて何が求められたのか

を整理しました。

先に結論
・管理薬剤師は、原則としてほかの場所で「薬事に関する実務」をすることが禁止されている(薬機法第7条)
・ただし、都道府県知事の許可があれば例外的に認められる(学校薬剤師、夜間休日の輪番、へき地など)
・休日にほかの薬局で調剤のアルバイトをするのは、原則としてできない
・薬事と関係のない副業は、薬機法の兼務禁止の対象外。ただし、就業規則や管理業務への支障には注意


管理薬剤師の「兼務禁止」とは

薬機法第7条では、薬局の管理者(管理薬剤師)について、次のように定められています。

薬局の管理者は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。

ポイントは3つです。

  1. 禁止されているのは「その薬局以外の場所」での仕事
  2. 対象は「薬局の管理その他薬事に関する実務」
  3. 都道府県知事の許可があれば例外になる

管理薬剤師は、その薬局を「実地に管理」する責任者です。
ほかの場所でも薬事の仕事をしていると、自分の薬局の管理がおろそかになったり、何かあったときに責任の所在があいまいになったりします。兼務禁止は、それを防ぐためのルールです。


例外として認められるケース

厚労省の通知「薬局の管理者の兼務許可の考え方について」(平成31年3月20日)では、都道府県知事が許可できるケースとして、次のような例が示されています。

ケース内容
学校薬剤師非常勤の学校薬剤師を兼ねる場合で、管理者としての業務に支障がないと認められるとき
夜間・休日の輪番薬局の営業時間外の夜間・休日に、地域の輪番制の調剤業務に従事する場合
へき地へき地で管理者の確保が難しい場合に、営業時間外にほかの薬局に勤務する場合

どのケースも、地域の実情や個別の事情をふまえて、管理者としての業務に支障がないと判断された場合に限られます。
共通しているのは、公益性があることと、自分の薬局の管理に支障が出ないことです。

※実際の許可の運用(申請の方法、認められる範囲)は、都道府県によって取扱要領が定められています。必ず、自分の薬局がある都道府県の薬務担当に確認してください。


ケース別:これはできる?できない?

よくある疑問を整理してみました。
あくまで一般的な考え方なので、実際の判断は都道府県の薬務担当や勤務先に確認してください。

ケース考え方
休日に、ほかの薬局で調剤のアルバイト薬事に関する実務なので、原則できない。例外は、許可を受けた輪番・へき地など
学校薬剤師を兼ねる許可を受ければ可能なことが多い
地域の休日夜間当番(輪番)に出る営業時間外で、許可を受ければ可能
ドラッグストアで医薬品の販売に従事する薬事に関する実務にあたるため、原則できないと考えるのが安全
薬と関係のない副業(飲食店、物販など)薬機法の兼務禁止の対象外。ただし就業規則・管理業務への支障に注意
医療・薬の記事の執筆、セミナー講師など「薬事に関する実務」にあたるかはグレー。判断に迷うものは都道府県に確認を

薬事と関係ない副業なら大丈夫?

薬機法の兼務禁止は、あくまで「薬事に関する実務」が対象です。
薬と関係のない副業であれば、薬機法上は禁止されていません。

ただし、次の2点には注意が必要です。

1. 会社の就業規則

多くの薬局チェーンでは、就業規則で副業を禁止していたり、事前の届け出や許可が必要だったりします。
法律上問題がなくても、就業規則に違反すれば、社内での処分の対象になることがあります。

2. 管理業務への支障

管理薬剤師は、薬局を「実地に管理」する責任者です。
副業で疲れがたまって本業に支障が出たり、急な対応ができなくなったりすれば、管理者としての責任を果たせません。
法律上の問題がなくても、本業に支障が出ない範囲にとどめることが大前提です。


2026年7月の通知で、あらためて求められたこと

2026年7月30日、厚労省から「薬局における適正な業務の確保等について」という通知が出ました。
背景にあったのは、薬局の管理者が、その薬局以外の場所で薬局の管理や薬事の実務に従事し、さらに必要な記録も適切に残していなかったために、調剤の責任の所在があいまいになったという違反事案です。

通知では、次のような点があらためて求められています。

  • 薬局開設者(会社):法令を守るための体制をつくること。管理者の意見を尊重し、講じた措置の内容を記録して保存すること
  • 管理者(管理薬剤師):その薬局を実地に管理し、業務に必要な注意をはらうこと。薬局開設者に必要な意見を書面で述べること
  • 兼務の禁止:管理者は、その薬局以外の場所で薬事の実務に従事してはならないこと
  • 報告:違反やそのおそれに気づいたときは、都道府県知事に速やかに報告すること

ここで大事なのは、兼務禁止は管理薬剤師個人だけの問題ではないということです。
「人手が足りないから、管理薬剤師に系列の別店舗も手伝ってもらう」――こうした運用は、会社(薬局開設者)の責任も問われます。
人手不足の現場ほど、こうしたことが起きやすいのかもしれません。

💡 もし会社から、許可のないままほかの店舗での勤務を求められたら、管理薬剤師として書面で意見を述べることができます。通知でも、管理者が開設者に書面で意見を述べ、開設者はそれを尊重することが求められています。


管理薬剤師の立場から考えると

管理薬剤師は、責任が重いわりに手当が見合わない……と感じている人も少なくないと思います。
そのうえ副業にも制限があると、「割に合わない」と感じるのも無理はありません。

管理薬剤師の手当や待遇については、こちらの記事でも書いています。
→ 管理薬剤師は割に合わない?「調剤ベースアップ評価料」で見えた、薬局経営の残酷な本音

収入を増やしたいなら、副業で無理をするより、管理薬剤師としての経験を評価してくれる職場に移るのもひとつの方法です。
管理薬剤師の経験は、転職市場では評価されやすい経験のひとつです。


まとめ

  • 管理薬剤師は、薬機法第7条により、原則としてほかの場所で薬事に関する実務をすることが禁止されている
  • 都道府県知事の許可があれば例外になる(学校薬剤師、夜間休日の輪番、へき地など)。運用は都道府県ごとに確認を
  • 休日にほかの薬局で調剤のアルバイトをするのは、原則できない
  • 薬と関係のない副業は兼務禁止の対象外。ただし就業規則と管理業務への支障に注意
  • 2026年7月30日の通知では、兼務禁止に加えて、開設者の法令遵守体制、管理者の書面での意見、記録の保存、違反の報告があらためて求められた
  • 兼務禁止は、管理薬剤師個人だけでなく会社の責任でもある

「知らなかった」では済まされないルールなので、迷ったときは、都道府県の薬務担当に確認するのが確実です。
少しでも参考になれば嬉しいです😊


参考

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第7条
  • 厚生労働省「薬局の管理者の兼務許可の考え方について」(平成31年3月20日 薬生総発0320第3号)
  • 厚生労働省「薬局における適正な業務の確保等について」(2026年7月30日)

※同じ名前の通知は2017年(平成29年11月8日)にも出ています。この記事で取り上げているのは2026年7月30日のものです。

関連記事

この記事を書いた人
yakuzaishi-real

病院薬剤師として10年以上勤務したのち、30代で薬局薬剤師へ転職しました。抗がん剤の調製やチーム医療、病棟での服薬指導など、病院での経験を土台に、転職体験や薬局の日常を本音でお伝えしています。同じように悩む薬剤師の方の参考になれば嬉しいです😊

yakuzaishi-realをフォローする
診療報酬・制度の解説
シェアする
yakuzaishi-realをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました