「薬剤師って、病院と薬局どっちがいいんだろう?」
薬学部を卒業するとき、あるいは就職して数年が経ったころ、そんな問いを持ったことがある人は多いと思います。
私は、調剤薬局で働いたあとに病院に就職し、病院薬剤師として10年以上働いてから、また薬局に転職しました。
転職したこと自体に後悔はありません。ただ、振り返ってみると「20代のうちに知っていたらよかった」「あのときの経験が意外なところで役に立った」と思うことがいくつかあります。
この記事は、薬局への転職をすすめる記事ではありません。
やりたい方向が見つかっている人は、そのまま進めばいいと思います。この記事は、「まだはっきり決まっていない」「なんとなく迷っている」20代の薬剤師に向けて書いています。
この記事でわかること
・やりたいことが決まっていない20代が、キャリアを選ぶときの考え方
・「実務経験」が求められる時代に、選択肢を狭めないためのポイント
・薬局での経験や保険薬剤師の登録が、あとで思わぬ形で役に立った話
・退職金や「特化するかどうか」を、どこまで気にすればいいか
迷っているなら「選択肢を狭めない選び方」を
やりたい方向がはっきり見つかっている人は、迷わずその道に進めばいいと思います。
一方で、「まだよくわからない」「なんとなく今の職場にいる」という人もいるはずです。
そういう人に、私が伝えたいのはひとつです。
選択肢が狭まるような選び方は、できるだけしないほうがいい。
というのも、今は病院でも薬局でも、採用のときにある程度の実務経験を求められる傾向があるからです。
「いつか薬局に移るかも」「いつか病院で働いてみたいかも」と思っていても、その分野の経験がまったくないと、あとから入るのが難しくなることがあります。
だからこそ、方向が決まっていないうちは、あとからいろいろな道を選べる状態を保っておく。これが20代のキャリアでいちばん大事なことだと思っています。
病院と薬局の働き方や待遇の違いは、こちらの記事で詳しく比べています。
→ 病院薬剤師 vs 薬局薬剤師 働き方・待遇を比較【転職経験者がリアルに解説】
意外と役に立った「薬局での経験」と「保険薬剤師の登録」
これは私自身も、正直驚いた話です。
私は病院に就職する前に、調剤薬局で働いていました。そのときに保険薬剤師として登録していたのですが、それから10年以上たって病院から薬局に転職したとき、この登録がすでにあったことが、思った以上にプラスに働きました。
まっさらな状態から新しく登録して転職するよりも、ずっとよかったようです。まさかここで役に立つとは思っていませんでした。
また、薬局での勤務経験は、たとえばかかりつけ薬剤師の要件(保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験)にも関わってきます。
2026年の改定で、病院での経験は最大1年分しか薬局勤務経験に算入されません。一方で、若いころの薬局での経験は、あとで薬局に戻ったときの土台になります。
💡 かかりつけ薬剤師の要件や、病院から転職して何年でなれるかは、こちらの記事でまとめています。
→ かかりつけ薬剤師は2026年改定でどう変わった?要件の緩和と、病院から転職して何年でなれるか
若いころの経験は、そのときは「回り道」に見えても、何年もたってから効いてくることがあります。
特化するより「たくさんの経験」が、あとでつながる
20代のうちから専門を決めて、ひとつの分野に特化するのも立派な選択です。
ただ、「なんとなく」で特化するくらいなら、いろいろな経験を積んでおくほうが、私はいいと思っています。
実際、薬局・病院といろいろな現場を経験してきて感じるのは、あとになって、それぞれの経験がリンクしてくることがある、ということです。
そのときは「これが何の役に立つんだろう」と思っていたことが、何年もたってから別の場面でつながって、助けられることがあります。当時はバラバラだった経験が、あとから一本の線になるような感覚です。
20代のうちに身につけておきたいこと
どちらの道を選んでも、20代のうちに意識しておくと、あとの選択肢が広がることがあります。
- コミュニケーション力:服薬指導、疑義照会、他職種との連携。薬剤師の仕事の多くは「伝える・聞く・つなぐ」でできています
- 薬の知識の土台を広く持つこと:専門を深めるのは大事ですが、その前提に幅広い知識があるほうが、どこに行っても応用が利きます
- 研修認定薬剤師などの単位:転職するかどうかに関係なく、早めに積み始めておくと、あとで「要件を満たしていない」と困ることが減ります
- 自分の「得意」と「好き」を言葉にする習慣:「こういう患者さんに関わるのが好き」「こういう業務が得意」を積み上げていくと、10年後のキャリアを考えるときの地図になります
退職金は、正直そこまで気にしなくていい
病院、とくに公立病院で働いていると、「辞めたら退職金が減る」と気になる人も多いと思います。
でも正直に言うと、退職金のことは、そこまで気にしなくていいと私は思っています。
大事なのは、毎月、多めに積み立てられるだけの給与があることです。
今はNISAのような制度もあるので、退職金に頼るより、毎月コツコツ積み立てていくほうが、自分で将来をコントロールしやすい時代になっています。
退職金や、転職後の資産形成については、こちらの記事で詳しく書いています。
→ 病院薬剤師が薬局に転職すると退職金はどうなる?新NISA積立・投資で備える考え方
「10年後から逆算して」より「引き出しを増やす」が現実解かもしれない
正直に言うと、私自身は10年後を逆算してキャリアを組み立ててきた、という感覚はあまりありません。
5年先くらいを見据えて考えることはあっても、10年もすると制度が変わり、薬剤師の役割も変わり、職場の状況も変わる。ふと振り返ると、進める方向がいつの間にか絞られていた——そういう経験をしている薬剤師は少なくないと思います。
だからこそ、「どこに行っても、ある程度やっていける引き出しを持つこと」が、長いキャリアを支えるのだと感じています。制度が変わっても、職場が変わっても、次の手が打てる状態を保つこと。
もちろん、そのためにはエネルギーも必要です。どこまでやるかは人それぞれで、「そこまでしなくていい」という判断も立派な選択です。
まとめ
- やりたい方向が見つかっている人は、そのまま進めばいい
- 迷っているなら、選択肢が狭まる選び方はしない。病院でも薬局でも、実務経験を求められる傾向がある
- 若いころの薬局での経験や保険薬剤師の登録は、あとで思わぬ形で役に立つことがある。かかりつけ薬剤師の要件にも関わる
- 「なんとなく特化」より、たくさんの経験を積んでおくと、あとでそれぞれがリンクしてくる
- 研修認定薬剤師などの単位は、早めに積み始めておく
- 退職金は気にしすぎなくていい。毎月積み立てられる給与と、NISAなどの制度を活かすほうが大事
転職するかどうかより先に、「自分はどんな薬剤師になりたいか」を、少しずつ考えてみてください。
その問いを持ち続けることが、10年後の自分の選択肢を広げてくれると思っています😊
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※この記事は、薬局・病院で働いてきた筆者の実体験と視点をもとに書いています。キャリアに関する選択は、ご自身の状況に合わせて判断してください。

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