はじめに
「ヒューマリンR・N・3/7のミリオペンが、限定出荷……?」
2026年10月14日から、日本イーライリリーのインスリン製剤6製品が「限定出荷(他社品の影響)」になりました。
背景にあるのは、ノボ ノルディスク ファーマが10月に案内を始めた、インスリン製剤7製品の販売中止(2028年3月を目途)です。
今回の件が混乱しやすいのは、製品名が似ていて、規格やデバイス(バイアル・カート・ミリオペン)も複数あるうえに、似た時期に別の案内も出ているからです。たとえば、同じ「ヒューマリンN」でも、
- ヒューマリンN注ミリオペンは限定出荷
- ヒューマリンN注カートは通常出荷
- ヒューマリンN注100単位/mL(バイアル)は2026年11月頃に販売終了予定
と、状況がまったく違います。
インスリンの処方が来たときに取り違えないよう、
- 何が、いつから限定出荷になったのか(製品名とデバイスを1つずつ)
- 似た時期の別の案内(ヒューマリンのバイアル販売終了、ノボ社の販売中止)との違い
- 薬局で処方医と確認したいこと
を、メーカーの案内(原文)と厚労省のデータをもとに整理しました。
まず整理:似た時期に、3つの別の案内が出ています
| いつ | 誰が | 何が | 対象 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月の案内 | 日本イーライリリー | 販売終了(2026年11月頃、在庫状況により前後) | ヒューマリンN注100単位/mL、ヒューマリン3/7注100単位/mL(どちらも10mL×1バイアル) |
| 2026年10月(10月5日から案内開始) | ノボ ノルディスク ファーマ | 販売中止予定(2028年3月を目途) | 7製品(下の表) |
| 2026年10月14日から | 日本イーライリリー | 限定出荷(他社品の影響) | 6製品(下の表) |
3つめの限定出荷は、2つめのノボ社の販売中止の影響です。1つめのバイアルの販売終了は、別の案内(4月)です。
限定出荷になったのは、この6製品
日本イーライリリーの案内(令和8年10月)の対象製品は、次のとおりです。いずれも3mL(100単位/mL)で、ミリオペンは2キット入り、カートは2カートリッジ入りです。
| 販売名 | 包装 | 出荷の状況 |
|---|---|---|
| ヒューマリンR注ミリオペン | 3mL(100単位/mL):2キット | 出荷量:A. 出荷量通常/③ 限定出荷(他社品の影響) |
| ヒューマリンN注ミリオペン | 3mL(100単位/mL):2キット | 同上 |
| ヒューマリン3/7注ミリオペン | 3mL(100単位/mL):2キット | 同上 |
| ヒューマログミックス50注ミリオペン | 3mL(100単位/mL):2キット | 同上 |
| インスリン グラルギンBS注ミリオペン「リリー」 | 3mL(100単位/mL):2キット | 同上 |
| インスリン グラルギンBS注カート「リリー」 | 3mL(100単位/mL):2カートリッジ | 同上 |
厚労省の供給状況データ(2026年10月30日公表分)でも、この6製品はすべて「③限定出荷(他社品の影響)」、理由は「需要増」、解除の見込みは「未定」です(10月15日更新)。
リリーが案内している理由と、お願い
案内には、次のように書かれています。
- ノボ ノルディスク ファーマが、リリーのインスリン製剤の同種同効薬の製造販売中止の案内を10月5日から始めたと承知している
- リリーは通常の需要に対する在庫は確保しているが、他社の同種同効薬の販売中止に伴う代替としての処方に十分対応できるだけの在庫は確保していない
- そのため、現在治療を継続中の既存の患者さんへの供給を優先するために、限定出荷を開始した
- 他社のインスリン製剤の代替としての処方は控えてほしい
つまり、今回の限定出荷は、今ヒューマリンなどを使っている患者さんに薬を届け続けるための措置で、ノボ社の製品からリリー社の製品への切り替えを受け止めきれない、という説明です。
同じ名前でも、対象外のものがあります
デバイスが違うと、状況が違うのが今回のいちばんの注意点です。厚労省データ(10月30日公表分)では、次のとおり「①通常出荷」でした。
| 販売名 | 包装 | 出荷の状況 |
|---|---|---|
| ヒューマリンR注カート | 300単位1筒 | 通常出荷 |
| ヒューマリンN注カート | 300単位1筒 | 通常出荷 |
| ヒューマリン3/7注カート | 300単位1筒 | 通常出荷 |
| ヒューマリンR注100単位/mL(バイアル) | バイアル(100単位/mL) | 通常出荷 |
| ヒューマリンN注100単位/mL(バイアル) | バイアル(100単位/mL) | 通常出荷(ただし2026年11月頃に販売終了予定) |
| ヒューマリン3/7注100単位/mL(バイアル) | バイアル(100単位/mL) | 通常出荷(ただし2026年11月頃に販売終了予定) |
| ヒューマログミックス50注カート | 300単位1筒 | 通常出荷 |
| ヒューマログミックス25注ミリオペン、ヒューマログミックス25注カート | 300単位1キット、300単位1筒 | 通常出荷 |
「ヒューマログミックス50」はミリオペンだけが限定出荷で、カートは通常出荷。「ヒューマログミックス25」は、ミリオペンもカートも通常出荷です。名前が似ているので、とくに注意したいところです。
背景:ノボ ノルディスク ファーマの販売中止予定の7製品
ノボ ノルディスク ファーマの案内(2026年10月)では、次の7製品を2028年3月を目途に販売中止する予定とされています。どれも「フレックスペン」「フレックスタッチ」「ペンフィル」のデバイス製品です。
| 販売名 | 包装 | 種類 | ノボの案内にある代替薬候補 | 出荷の状況(10月30日公表分) |
|---|---|---|---|---|
| ノボラピッド注 フレックスタッチ | 2本(3.0mL) | 超速効型 | 記載なし | ⑤供給停止(出荷量:C. 出荷停止) |
| ノボラピッド50ミックス注 フレックスペン | 2本(3.0mL) | 混合型(アナログ) | ノボラピッド30ミックス注 フレックスペン/ライゾデグ配合注 フレックスタッチ | 通常出荷 |
| ノボリンR注 フレックスペン | 2本(3.0mL) | 速効型(ヒト) | ノボラピッド注 フレックスペン | 通常出荷 |
| ノボリンN注 フレックスペン | 2本(3.0mL) | 中間型(ヒト) | トレシーバ注 フレックスタッチ | 通常出荷 |
| ノボリン30R注 フレックスペン | 2本(3.0mL) | 混合型(ヒト) | ノボラピッド30ミックス注 フレックスペン/ライゾデグ配合注 フレックスタッチ | 通常出荷 |
| レベミル注 フレックスペン | 2本(3.0mL) | 持効型 | トレシーバ注 フレックスタッチ | 通常出荷 |
| レベミル注 ペンフィル | 2本(3.0mL) | 持効型 | トレシーバ注 ペンフィル | 通常出荷 |
※ノボラピッド注 フレックスタッチは、すでに供給停止中で、案内にも代替薬候補の記載はありませんでした。
※ノボリンR注 100単位/mL(バイアル)や、ノボラピッド注 フレックスペン、ノボラピッド30ミックス注 フレックスペンなどは、この販売中止予定の7製品には入っていません(いずれも通常出荷)。
ノボの案内で代替薬候補とされているのは、ノボ ノルディスク ファーマの別の製品(アナログ製剤など)です。ヒューマリンは、ノボの案内には挙がっていません。
ヒューマリンのバイアル販売終了(2026年4月の案内)は別の件です
2026年4月の日本イーライリリーの案内では、次の2製品(バイアル)が販売終了とされました。
| 販売名 | 包装 | 販売終了予定 |
|---|---|---|
| ヒューマリンN注100単位/mL | 10mL×1バイアル | 2026年11月頃(在庫状況により前後) |
| ヒューマリン3/7注100単位/mL | 10mL×1バイアル | 2026年11月頃(在庫状況により前後) |
- 経過措置期間の満了日は2027年3月末日(予定)で、その後は薬価基準から削除され、保険請求ができなくなる予定
- 新規の患者さんへの処方は控え、病院や薬局での在庫がなくなり次第、代替薬の検討・変更をお願いしたい、という案内
- ヒューマリンR注100単位/mL(バイアル)は、販売終了の対象ではありません
このときの代替品として、リリーが案内していたのは次のとおりです。
| 販売終了の製品 | 案内されている代替品 |
|---|---|
| ヒューマリンN注100単位/mL | ヒューマリンN注ミリオペン/ヒューマリンN注カート/ヒューマリンR注バイアル |
| ヒューマリン3/7注100単位/mL | ヒューマリン3/7注ミリオペン/ヒューマリン3/7注カート/ヒューマリンR注バイアル |
ここで気をつけたいのは、4月の案内で代替品に挙がっていた「ミリオペン」が、10月14日から限定出荷になったことです。バイアルを使っている患者さんが、在庫がなくなったあとに切り替え先を探すとき、ミリオペンの限定出荷の影響を受ける可能性があります(どの製品に切り替えるかは処方医の判断です)。
取り違えやすい例:「N」だけでも、これだけあります
| 販売名 | どこの会社 | 状況(2026年10月30日公表分) |
|---|---|---|
| ヒューマリンN注ミリオペン | 日本イーライリリー | 限定出荷(10月14日から) |
| ヒューマリンN注カート | 日本イーライリリー | 通常出荷 |
| ヒューマリンN注100単位/mL(バイアル) | 日本イーライリリー | 通常出荷。2026年11月頃に販売終了予定 |
| ノボリンN注 フレックスペン | ノボ ノルディスク ファーマ | 通常出荷。2028年3月を目途に販売中止予定 |
「N」「R」「3/7」「30R」は、会社が違っても似た名前の製品がそろっています。処方箋に「ヒューマリン」と書かれているか「ノボリン」と書かれているか、デバイスまで含めて確認しましょう。
薬局でまず確認したいこと
- 販売名:ヒューマリン(リリー)か、ノボリン・ノボラピッド・レベミル(ノボ)か
- デバイスと包装:バイアル、カート、ミリオペン、フレックスペン、フレックスタッチ、ペンフィルのどれか
- 種類:R(速効型)、N(中間型)、3/7や30R(混合型)、持効型など
- 手元の残り、次の受診日
- 自分の薬局の在庫と、卸から入手できる見込み
⚠ 限定出荷は「既存の患者さんへの供給を優先する」ための措置です。必要な分だけの発注にとどめ、ほかの患者さんの分まで確保しようとしないようにしましょう。
処方医と相談するときの考え方
インスリンは、種類やデバイスが変わると、作用の出方や使い方が変わる薬です。切り替えるかどうか、どの製品にするか、用量やタイミングをどうするかは、処方医が決めることです。薬局が単位を換算して決めることはしません。
そのうえで、次のことを意識したいところです。
- ノボ社の製品を使っている患者さん:ノボの案内にある代替薬候補は、ノボの別製品です。リリーは「他社のインスリン製剤の代替としての処方は控えてほしい」としているので、「ヒューマリンに変えてもらえばいい」とは考えず、処方医に状況を伝えて相談します
- リリーの製品を使っている患者さん(ミリオペン、カート、バイアル):継続して使っている患者さんへの供給は優先される、という趣旨です。在庫が足りないときは、製品名とデバイスまで具体的に伝えて、処方医に相談します
- ヒューマリンN・3/7のバイアルの患者さん:2026年11月頃の販売終了に向けて、次回以降の切り替え先を、処方医と早めに話しておくと安心です
疑義照会や情報提供のときは、次の情報をそろえて伝えると、やりとりがスムーズです。
- 現在の販売名(デバイスまで)、1日の使用単位、残りの本数、次の受診日
- 薬局の在庫と、入手できる見込み
- 患者さんが使っている注入器や針、手技で困っていること
患者さんへの説明で気をつけたいこと
- 「供給の事情で、製品が変わることがあるかもしれません」と早めに伝える
- 自己判断で量や回数を変えたり、やめたりしないよう伝える
- 製品やデバイスが変わった場合は、新しい処方の指示どおりに使うこと、使い方(注入器の操作など)はあらためて一緒に確認すること
- 低血糖や高血糖が疑われる症状があるときは、早めに連絡・受診するよう伝える
「供給の都合で、いろいろご不便をおかけします。でも、先生と相談しながら対応しますので、困ったときは早めに教えてくださいね」
こんなふうにひとこと添えるだけで、患者さんの不安はずいぶん違うと思います🌿
欠品対応、続いていて疲れていませんか?
代替薬探しや卸への連絡、処方医への相談……。欠品対応の負担は、在庫の融通や発注の権限、情報を調べられる環境など、職場の仕組みでかなり変わります。病院と薬局の両方で働いてきた経験から、「医薬品の供給不足で疲れた薬剤師へ|欠品対応の負担は「職場選び」で変わる」にまとめました。
在庫がなくて調剤できないとき
2026年7月の厚労省通知「薬剤師の調剤応需義務等について」では、在庫がないことだけを理由に調剤を断ることは認められないとされました。
卸への確認、処方医への疑義照会、ほかの薬局の紹介など、患者さんが薬を受け取れるように動くことが求められています。
通知の詳しい解説はこちら → 薬局のカスハラ、断っていいの?「調剤応需義務」の新通知を現場の薬剤師が読んでみた
ほかの薬局を紹介するときは、販売名、デバイス、包装(本数)まで伝えて、紹介先に事前に電話で在庫を確認しておくと、患者さんが無駄足にならずにすみます。
調べてみて感じたこと
「ヒューマリンのミリオペンが限定出荷」というニュースだけを見ると、1つの会社の1つの製品の話に見えます。
でも、案内を原文で読み比べてみると、
- ノボ社の販売中止(2028年3月目途)と、
- リリーの限定出荷(10月14日から)と、
- ヒューマリンのバイアル販売終了(2026年11月頃)
という3つの別の案内が、同じ時期に重なっていることがわかりました。
しかも、製品名が似ていて、デバイスごとに状況が違います。
処方箋を見るときは、会社名、販売名、デバイス、包装までをセットで確認する。それが、いちばんの取り違え防止になりそうです。
まとめ
- 日本イーライリリーは、2026年10月14日から6製品を限定出荷(他社品の影響)に。ヒューマリンR・N・3/7注ミリオペン、ヒューマログミックス50注ミリオペン、インスリン グラルギンBS注ミリオペン「リリー」、インスリン グラルギンBS注カート「リリー」。解除の見込みは未定
- 理由は、ノボ ノルディスク ファーマの7製品の販売中止予定(2028年3月を目途)に伴う代替処方に、在庫が十分に対応できないため。既存の患者さんへの供給を優先し、他社インスリンの代替としての処方は控えてほしいとされている
- 同じ名前でもデバイスで状況が違う。ヒューマリンのカートとバイアル、ヒューマログミックス25は通常出荷(10月30日公表分)
- ヒューマリンN・3/7のバイアル販売終了(2026年11月頃)は別の案内。経過措置期間の満了は2027年3月末日(予定)。ヒューマリンR注100単位/mL(バイアル)は対象外
- 切り替えるかどうか、どの製品にするかは処方医の判断。薬局では、会社名・販売名・デバイス・包装を確認し、必要な分だけの発注にとどめる
供給状況は日々変わります。実際に対応するときは、最新の情報と電子添文を必ず確認してください。
少しでも参考になれば嬉しいです😊
参考
- 日本イーライリリー「ノボ ノルディスクファーマ株式会社 インスリン製剤の製造販売中止案内に伴う弊社インスリン製剤に関するご案内」(令和8年10月)
- 日本イーライリリー「ヒューマリンN注100単位/mL、ヒューマリン3/7注100単位/mL(バイアル)販売終了のご案内」(2026年4月)
- ノボ ノルディスク ファーマ「販売中止に関するご案内」(2026年10月)
- 厚生労働省「医療用医薬品の供給状況」(2026年10月30日公表分)
- 厚生労働省 医薬発0708第1号「薬剤師の調剤応需義務等について」(2026年7月8日)
※欠品対応がしんどいと感じている方へ:その負担が「供給不足のせい」なのか「職場の仕組みのせい」なのかを見分けるポイントを、こちらの記事で書いています。
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